2nd album comment

※コメントは原文のまま、頂いた順に掲載させて頂きます。

 


STARVINGMANに昨年から加入したアベちゃんとはバンド仲間として、時には親友として、もうかれこれ10年近くの仲になる。

そんなアベちゃんが自分のバンドを休止中に他のバンドに参加すると聞いて驚いた。恥ずかしい話、僕はこの時アベちゃんの口から名前を聞くまでSTARVINGMANの事を知らなかった。

僕はアベちゃんの音楽が好きなので、そのアベちゃんが加入するなんて一体どんなバンドなんだろう?と凄く興味が湧いた。

初めて観たのは下北沢THREE。丁度リハーサルをSTARVINGMANがやっているのが聴こえてきて、ドキドキしながらフロアに行ったのを覚えてる。

そして見た瞬間にハッとした。

力強いんだけどどこか切ない音と言葉の弾丸が僕の方にビシビシ飛んできて、それを浴びながら心の中で拳を握っていた。そして気付けば感情移入していて…

僕はアベちゃんが素敵なバンドに入って嬉しかった。

パッと聴いてすぐ頭に残るメロディーラインとそれに軽快に乗ってくる歌詞。マーティさんがとても優れたソングライターであるのはすぐに分かったんだけど、一番に思ったのはなんだか親友みたいな存在の曲を書く人だなと思った。

時には叱ってくれたり、励ましてくれたり、自分の心のすぐ側にいてくれるかけがえのない存在。このアルバムはまさにそんな親友のような曲達が詰まってる。

最近中学からの親友がアメリカに転勤してしまって寂しかったんだけど、アベちゃんのおかげで新しい親友と呼べるSTARVINGMANのアルバムに出会えた。これはきっと心の灯火。

大きく奮い立ちました。ありがとう。

——— 田代タツヤ (下北沢THREE副店長/Magic, Drums & Love)


 
正直4人編成になって、音も強固になり、歌えるメンバーも増え、心強さと共にサウンド的には所謂メロコア感もガチっと増して、今後STARVINGMANはどうなるんだろう?って多少思ってた部分はあった。

そんな迷いもどこかに振り払って気持ちいいくらいの明確さで新作を届けてくれた彼ら。

「おれたちがやりたいことはこれだ」とこの時代でパンクバンドをやっている自負もしっかりと感じられる、それでいてメロディーも抜群に親しみやすい。簡単にやってのけてるけどすごいな。

当たり前だけどこの歳になると、アルバム最後の曲である「ワーキングクラスヒーロー」で歌われているような、いろんな小さなことのありがたみも、納得できないけどどーにかこーにかあくせく生活することも、それを無視することもできず考え続けることも多い。

「歌詞が強烈すぎるって?メッセージ色が強いって?」

あの子のことが好きな気持ちも、周りへの感謝も、大切なものを失った悲しみも世の中で曲にして歌われることは多いけど、「なんでなんだろうな?」って思うことを吐き出してるだけで、これは彼らから出てきた素直な歌でしょ。

だからなにも恥じることはない。

そして例えその言葉の本質がわからなくても恥じることはないのももちろん。

抜群のメロディックサウンドと語感の良さで歌詞なんてすっ飛ばして聴いてもらってもかまわない。個人的にはそう思ってる。

このリフがかっこいいなー、このシンガロングパート楽しいな、そんなんでもいい。

でも好きなバンドがどんなこと歌ってるんだろうなんて、気づいた時には知りたくなっている。口ずさめるほど歌った後はその言葉の本質に興味を持っている。

好きなものに出会う機会を、余計なものや理由で失うことほど悲しいことはないはずだから。

彼らが歌う役に立たない歌がいつだって僕を奮い立たせるんだ。

”違いは違いであっても
間違いなんかじゃないぜ

笑いたい奴には笑わせとけ
恥じることないぜ
必ず何処かにわかってくれる仲間がいるぜ
今は気づかないだけ

でもわかるようになるよ”

押し付けがましさのかけらもない、聴くだけでスッと耳に馴染むアルバム。自分にはそう感じます。

STARVINGMANが初めて音源を出したくらいの時、

『おれたちはいつも探してる。なにを探してるかって言ったら、自分にできることを』

そんなことをMCで言っていたんだけど、それは一段と力強くなってまだ警鐘を鳴らしている。続いてるんだぜ、今も。明日もこれからも。

はー、もう一回頭からアルバム聴こっと。
そして寝て起きたらまたどうしようもない生活が続く。くだらないニュースがTVから流れる。
でも、学んだり守ったりしながら進んでいこうぜ。うん、きっと大丈夫。

イヤホンを外してもメロディーと言葉が鳴り止まないな。素晴らしいパンクが詰まってます。

——— 4x5chin ( KYO-TEKI / DYNAMiTE CREW )
 
 


 
 
「DoTheRightThing」

出すたびに前作を超える。
いがいとむずかしい。

それを簡単やっているように見える。

飛んでくる声は、Punkだよ。聴いとくれ。

あいつの歌詞は、きれいだよ。読んどくれ。

こいつらの演奏は、一生懸命だよ。見ておくれ。

出来たら、僕らと一緒に小さい箱の汚い床の上で、デカい、チイサイ、歓声をあげよう。

そして、翌日、鏡の中に映る情けない自分を、少しだけ認められたら、いいなぁ。

そんな世界を描いてくれているアルバム。

自分は泣き虫で弱虫だ。ずっと人ではなく虫。

その虫にも届く声だよ。人間も聴いたら最高だよ。

僕は、虫だし、クソだから、DoTheRightThingなんて思えない。

だが、彼らが言うように

「暗闇に覆われ回る世界で、光を見つけること」

さえ、出来なくなる前に、これを聴けてよかった。

このアルバムが僕にとってのチイサナ光になったように、君にとってのチイサナ光になるといいなぁ。

明日は、道に捨てられたゴミを、拾って、ゴミ箱へ入れるかも。朝、知らない子供とすれ違った時、おはようって言うかも。

へへ、DoTheRightThing、だ。

おっと、僕が捨てられないよう気をつけなくちゃ。あはは。

———  クボツトム  A PAGE OF PUNK

 


 

starvingmanは、そのstarvingmanのまま、更に研ぎ澄まされたstarvingmanになって、新しいアルバムを間違いなく完成させていた。

きっとマーティー君が6年前に思い描いた、存在してくれたら心強いと思えるパンクバンドは、時を経てマーティー君自身がその化身になって、2017年のここに具現化させられたのじゃないのかなと勝手ながらに思ったりする。
そしてそれは勿論僕にとっても、とても心強い存在になっている。

その時は当たり前に共存させられないんじゃないかと思われていた、マーティー君が持っているメロディーと、マーティー君のアイデンティティが、今じゃもう当たり前にガッチリ手を取り合って一心同体になっている。
一人の人間の中で起こった話だけど、なんて美しい事なんだろうなって思うのです。そしてきっとこれは、誰かと誰かの間にだって起こり得てほしい事だとも思う。

違いは違いであっても、間違いなんかじゃないぜ。

誰もがそうであるべきはずな事を、誰もが扱えるように、誰にでも届く言葉で伝える事は時々とても困難に思えるけど、こんなにも軽やかにスッと胸に入ってくる言葉を耳にするたびに、まだまだやれるかもしれないよなって思わせてもらえる。

っと、きっとそんな風に、誰もが思えるはずな素晴らしいアルバムなので、絶対に聞いてほしいなと勝手ながらに思いを馳せさせて頂いております。

 

———  ヤブソン  SEVENTEEN AGAiN

 


 

「Sound Of Sirens」

このタイトルを初めて聞いたとき、思わずニヤニヤしてしまったが、「ん、ちょっと待てよ。大丈夫かマーティ?」とすぐに思い直した。

というのは、元ネタであるサイモン&ガーファンクルの名曲「Sound Of Silence」のことであるが、この曲、そう簡単にイジっていい曲ではないのだ。

マーティや僕のようなサイモン&ガーファンクル信者(「サイガー」)にとっては周知の事実であるが、この曲にはオリジナルの「アコースティックver.」と、作者のポールサイモンに無断で勝手にアレンジされた、「エレクトリックver.」がある。後者を聴いたポールサイモンは激怒したというエピソードがあり、僕達「サイガー」にとってはこの曲は「イジってはイケない神聖な曲」としての暗黙のルール、いわゆる偏屈者であるサイモンをこれ以上怒らせない為の無意識の結束のようなものがあり、慎重に扱ってきた。

が、ここにきてのスターヴィングマンである。しかも、よりによって「Silence(静寂)」を「Sirens(サイレン)」に、真逆に変える大胆さである。「大丈夫か、マーティ?」ならぬ、「しくじるなよ、マーティ? “Marty can’t fail”」である。

しかし、今一度思い直してみる。「顔は少し曲がってるけど、心はまっすぐな男」で知られるマーティ。その誠実な彼が語呂合わせのためだけに、このタイトルを使うであろうか。答えは「NO」だ。逆に考えれば、これはただ事ではないのかも知れない。もっと言えば、あの物静かな彼が「サイレン(警報)」を鳴らす。その意味を考えると、このタイトルに秘めた覚悟は計り知れない。どころか、むしろサイモンへの回答にさえも思えてきた。

その回答は表題曲の以下の歌詞の中で明らかになる。

゛大きなsilenceにも届け
この音はsirens of 草の根″

ハハハ、なんと見事であろうか。

歌詞や韻、メロディーの美しさのみならず、彼らの真骨頂であるグルーブ感や、より厚みを増したシンガロングが相まって、とんでもない事になっているではないか。悔しいが「完璧」の一言である。しかもこのエネルギーとクオリティーがアルバム全篇に渡っているのだから、凄まじくとんでもないアルバムだと思う。
なるべく多くの人に聴いてもらえることを切に願う。そして彼らの「警報」の本当の意味を耳を塞がず聴きとって欲しい。

表題曲「Sound Of Sirens」のアウトロで、
本家「Sound Of Silence」のイントロが聴こえてくる。

僕はニヤニヤしながら
「大丈夫だよ、マーティ」ともう一度思い直した。

———  ワタナベナオキ FOUR TOMORROW

 


 

兎角、「音楽に政治を持ち込むな」みたいな事言われる昨今。考えなきゃいけない事は確実にあって、でも確かにそういう事に拒否反応示す層がいるのもわからなくはなくて。主張を武器に戦うってのはなんとも難しいなあと思う事、ここ数年。
デモテープから一貫して戦い続けるSTARVINGMANの新作は、前よりもちょっと力をつけてやっぱり戦っていた。
このアルバムは世界を変える!なんてことは思わない。踏み込んだ分だけ、離れてしまうものもたくさんある事を経験上知ってるから。
でも。それでも。
耳障りのいい韻の踏み方と節回し。それが抗いようのないポップなメロディーにこれでもかってくらい乗っかってて。
音楽に政治を持ち込むな、って言ってる人の耳に、魂に、嫌が応なく割り込む力がこのバンドにはあるんじゃないかって思ってるんですよ、俺は。
そういう意味でいうと、ね。俺はもう何年も前からSTARVINGMANの事、エースだと思ってるんだよね。

正しさと快楽を繋ぐのは容易くないもんなあ。
でも、君たちならたぶん示せると信じてるよ。

———  長沢典明 FOUR TOMORROW / FLAT BOWL